今回は、IntelのCPUに関する問題についてです。
海外メディアで報じられた「IntelのRMA(返品保証)リクエストの大失敗」というニュース――なんと、一度は合意したはずの返金対応を、Intel側が拒否して撤回し始めたという、悪夢のような報告が上がっています。
まずは歴史を振り返る:Raptor Lake劣化問題とは
今回の「返金拒否騒動」の深刻さを理解するには、この1年以上ゲーマーを苦しめてきたIntel CPU劣化問題の歴史を知る必要があります。
対象は第13・14世代Core プロセッサー
対象となるのは第13世代および第14世代のCoreプロセッサーです。結構新しいCPUです。
このCPU、何の対策もせずに使い続けていると、内部が物理的に劣化して不安定になるという致命的な不具合を抱えていました。
ソフトの問題ではありません。過剰な電圧がかかり続けることで、CPU内部の回路がダメージを受けます。一度劣化してしまったCPUは、どんなにアップデートしても二度と元には戻りません。
問題の歴史:2022年12月から
この問題の歴史は2022年の12月まで遡ります。
最初は「ビデオメモリ不足」という謎のエラーが出るという報告から始まりました。CPUなのにビデオメモリのエラー?NVIDIAのグラボを積んでいてもエラーが出るため、最初はみんなグラボやゲーム側のバグだと思っていたのです。
特に「ホグワーツ・レガシー」のようなUnreal Engineを使った重いゲームで、シェーダーのコンパイル中にクラッシュする事例が多発しました。
2023年を通じて不満が爆発し、2024年に入ってようやくメディアが大々的に報じ始めました。
Intelの責任転嫁と遅すぎる認識
最初はIntelも「マザーボードメーカーが電圧盛りすぎなのが悪い」みたいな態度でした。
マザーボードメーカーは慌てて「Intel推奨設定」を強制するBIOSを出しましたが、それでも問題は収まりませんでした。
そして2024年7月、ついにIntelは「ごめん、電圧制御のアルゴリズムにバグがあったわ」と認めました。
さらに悪いことに、一部の製造ロットでは「酸化」による欠陥もあったことが判明。製造工程の問題です。これと電圧の問題が合わさって、多くのCPUが不調に陥っていたわけです。
最終パッチと保証延長
Intelはそこから必死に修正パッチ(マイクロコード)を作り始めました。
そして2024年10月、ついに最終的な解決策となる「0x12B」というパッチを発表。このパッチを適用すれば、アイドル時や軽い作業時に無駄な高電圧がかかるのを防げます。
Intelも「これで不安定性問題は解決した!」と高らかに宣言しました。
ただし大きな落とし穴が
このパッチはあくまで「これ以上劣化させないための予防策」です。すでに高電圧でダメージを受けて劣化してしまったCPUを、魔法のように治すことはできません。
もう壊れちゃった人はどうすればいいのか?
そこでIntelが出した救済策が2年間の保証延長です。「壊れたCPUは新品と交換(RMA)するか、全額返金しますよ」という対応を約束しました。
交換してもらって、新しいCPUにすぐ対策パッチを当てれば、もう劣化しない――実際、Core i9-13900Kを交換に出したら、最新の14900Kにアップグレードされて戻ってきたなんてラッキーな報告もありました。
「Intelはこの件を真摯に反省し、ユーザーサポートを厚くして信頼を取り戻そうとしている」とみんなが信じていました。
しかし、その「約束されたはずの救済」が、今になって反故にされ始めているというニュースが飛び込んできたのです。
衝撃の報道:約束した返金を撤回
Wccftechという海外のテック系メディアに、あるユーザーから悲痛なタレコミがありました。
そのユーザーは、Intelのサポートとやり取りをして、一度は「RMAによる全額返金」の合意を取り付けていました。証拠となるメールのスクリーンショットもバッチリ残っています。
お金が戻ってくるなら、それでAMDのCPUでも買えば解決――そう思ったはずです。
「却下されました」
ところが、後日Intelから届いたメールにはこう書かれていました。
「あなたの返金リクエストは却下されました」
一度「いいよ」って言ったのに!?
ユーザーからすればこれは「詐欺」に近い行為です。しかも、その拒否理由が「根拠のない」ものだったというからたちが悪い。
「やっぱり惜しくなったから返さない」ということでしょうか?世界のIntelがやることではありません。
背景にある台所事情?
背景には、Intelの台所事情があるのかもしれません。
最新の「Arrow Lake」プロセッサーがAMDに対して苦戦していて、シェアを落としています。業績が良くない中で、膨大な数のRMAリクエストに「現金」で応じるのが苦しくなってきたのではないか、と勘繰りたくもなります。
だからって約束を破っていい理由にはなりません。
もっと酷かった過去:在庫不足で1ヶ月待ち
そもそも、この「返金拒否」の前段階として、IntelのRMA対応はずっと「酷い」と言われ続けてきた歴史があります。
在庫枯渇による無限待機地獄
2024年9月頃に大きな問題になったのが、「在庫枯渇による無限待機地獄」です。
CPUメーカーなのにCPUがない――笑い話みたいですが、マジです。
あるRedditユーザー「Towel4」氏の事例を紹介しましょう。
- 彼は手持ちの「Core i9-13900K」が劣化したため、RMAを申請
- Intel側も「保証対象です」と認めた
- 住所やカード情報を送った直後、信じられないメールが届いた
「申し訳ありませんが、現在交換品(Core i9-13900K)の在庫がありません」
さらに追い打ち。
「アップグレード用の上位モデル(Core i9-14900K)の在庫もありません」
何もありません。世界最大の半導体メーカーの倉庫が空っぽです。
「3〜4週間後に製造されるかどうか計画チームに確認します」という、気の遠くなるようなアナウンス。トータルで4〜5週間、あるいはそれ以上待たされることが確定しました。
1ヶ月以上もPCなしで過ごせと?ゲーマーや仕事で使っている人なら死活問題です。
劣化CPUでの悲惨な生活
投稿者は憤慨していました。「13900Kも14900Kも手元にないなんて、本当に製造してるのか?物流が崩壊してるのか?」
実際、劣化したCPUを抱えたユーザーの生活は悲惨です。
Wccftechのライター自身も、劣化した13900Kを使っていますが、「Chromeを開くだけでクラッシュする」そうです。
ブラウザすらまともに動かない――電圧を下げて(アンダーボルト)、クロックを下げて(ダウンクロック)、性能を去勢して騙し騙し使うしかありません。
「新品と交換してやる」と言われて喜んで申請したら、「在庫がないから1ヶ月待て」と言われ、しびれを切らして「じゃあ返金してくれ」と言ったら、今度は「返金はやっぱりナシな」と梯子を外される。
踏んだり蹴ったりどころではありません。拷問です。
被害者Superino氏の悪夢
話を今回の騒動の渦中にいる被害者、Superino氏の件に戻しましょう。彼の体験談を聞けば、Intelのサポートがいかに「機能不全」に陥っているかがよく分かります。
賢い判断が裏目に
まず、Superino氏はPCが使えないと困る状況でした。「交換在庫がないから1ヶ月待て」なんて言われたら干上がってしまいます。
そこで彼は、Intelから「返金しますよ」という言質を取った段階で、自腹を切って新しいCPU「Core i9-14900K」を購入しました。
賢い判断です。どうせ後でお金が返ってくるなら、先に新しいのを買って環境を復旧させたほうが合理的です。
彼はIntelを信じていました。「後で返金処理をしてくれるはずだ」と。
絶望的な通知
だが、新品のCPUが届き、ウキウキでPCを直した彼に、Intelから絶望的な通知が届きました。
「あなたの購入証明書(レシート)は検証に失敗しました。よって返金リクエストは却下します」
詐欺です。先に新しいの買わせといて、後からハシゴを外したのです。
しかも、Superino氏が提出した領収書は、怪しい露店やオークションのものではありません。誰もが知る「有名な大手小売店」のものでした。
大手ショップのレシートが「検証失敗」になるわけがありません。難癖つけて払いたくないだけとしか思えません。
送りつけられた不要な交換品
彼は当然、必要なあらゆる詳細情報をRMAチームに再提出しました。「これを見てくれ、正規の購入だ!」と訴えたわけです。
だがIntelは、一度承認したはずの返金を一方的に取り消し、彼の希望を無視してある行動に出ました。
「標準的な交換品(Core i9-13900K)」を、彼の自宅に送りつけてきたのです。
嫌がらせでしょうか?彼はもう自腹で14900Kを買っちゃっています。今さら古い13900Kなんて送られてきても、ゴミになるだけです。
彼の手元には、「自腹で買った新品」と「Intelから送りつけられた交換品」が重複して存在することになります。そして財布からは、戻ってくるはずだった数万円(あるいは十数万円)が消えたままです。
最悪の二重課金です。
完全無視
Superino氏も黙ってはいませんでした。交換品が輸送されている間に、必死でIntelの担当者に連絡を取ろうとしました。
「なぜ返金が拒否されたのか説明してくれ!」「交換品なんていらないから金を返してくれ!」
当然の権利です。だが、ここからが本当のホラーです。
彼が数え切れないほどのメールを送ったにもかかわらず、Intel側からの応答は一切なし。
完全なる無視(Ghosting)です。理由の説明もなく、ただ「交換品を送ったからこれで終わり」とばかりに、コミュニケーションを遮断したのです。
企業の対応として終わっています。「間違えました」ならまだしも、説明責任すら果たしません。
結局、Superino氏は今、当初の約束通りの返金を求めて、消費者保護当局に訴え出る準備を進めているそうです。
この一件は、Raptor Lakeの不具合騒動以降、Intelのサポート体制がいかに劣化し、ユーザー軽視に陥っているかを浮き彫りにしました。
「Intelなら安心」の神話崩壊
なぜ今回、たった一人のユーザーのトラブルをここまで大きく取り上げるのか。それには深い理由があります。
Intelは長年にわたり、コンシューマー向けCPU市場における「絶対王者」だったからです。
「パソコンといえばインテル入ってる」が合言葉でした。PCに詳しくない人でも、「とりあえずIntel選んどけば間違いない」という安心感がありました。
Intelは常に「安全な賭け」でした。多少高くても、性能が安定していて、サポートもしっかりしている。だからこそ選ばれてきました。
だが、今回のSuperino氏の件や、Raptor Lakeの一連の騒動が示したのは、その神話の崩壊です。
サポート体制の機能不全
最近のIntelは、製品の品質だけでなく、それを支える「サポートチーム」までもが、顧客の期待に応えられずに喘いでいます。
- 返金を約束しておいて反故にする
- 在庫がないから1ヶ月待たせる
- 問い合わせを無視する
かつての王者からは考えられないような、お粗末な対応が常態化してしまっています。企業としての足腰が弱っている感じがして怖いです。
ゲーマーの懸念
この結果、何が起きているか。小売市場における「Intelへの関心」が急速に薄れています。
特に、PCパーツに一番お金を落としてくれる「ゲーマー」たちの間で、深刻な懸念が広がっています。
彼らは今、真剣に悩み始めています。「果たしてIntelは、まだ我々の『優先的な選択肢』であり得るのか?」と。
今までは「Intel一択」だった人が、「次はAMD(Ryzen)にしようかな……」と揺らいでいるわけです。
かつては「AMDは玄人向け、Intelは万人にオススメ」なんて言われた時代もありました。だが今は、「Intelを買うこと自体がリスク」になりつつあります。
サポートが機能不全に陥った企業に、数万円、数十万円のパーツを預ける勇気があるでしょうか?
まとめ:脳死でIntelはやめておいたほうがいいかもしれない
「Intel RMAのサポートが崩壊していて、もはや『終わっている』かもしれない」という話でした。
「インテル入ってる」が安心の証じゃなくて、不安の種になるなんて思いもしませんでした。
第13世代・14世代の物理的な劣化問題だけでも致命的なのに、その後の対応がこれでは:
- 返金を約束して裏切る
- 在庫がなくて1ヶ月待たせる
- 都合が悪くなるとメールを無視する
企業の規模は超一流でも、やってることは三流以下の悪徳業者みたいです。
これまで私たちは、「迷ったらIntelを選んでおけば間違いない」と教わってきたし、そう信じてきました。だが、その「安全な時代」は、音を立てて崩れ去ったと言っていいでしょう。
今はもう、「Intelを選ぶこと自体がリスク」になっているのかもしれません。
これからPCを組む人へ
もちろん、Intelも必死に立て直しを図るでしょうが、一度失った信頼を取り戻すのは並大抵のことではありません。
これからPCを自作する人、BTOパソコンを買う人は、「脳死でIntel」はやめておきましょう。
現状のリスクを理解した上で選ぶか、あるいはライバルのAMDを検討するか。賢い消費者になる必要があります。
高い買い物です。後悔しないように慎重に選びましょう。
Intelがこの信頼の危機を乗り越えるには、単に新しいCPUを作るだけではダメです。地に落ちたサポート体制を立て直し、「Intelは客を裏切らない」という証明を積み重ねるしかありません。
だが、今の彼らの対応を見ていると……その道のりは果てしなく険しそうです。


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