PC業界の巨人「Dell(デル)」が、とんでもない爆弾を落とそうとしています。
報道によると、Dellは法人向けPCを中心に、なんと最大30%もの大幅値上げを計画しているというのです。
消費税が3回上がってもまだ足りないレベルの衝撃的な数字です。
30%値上げの衝撃
具体的な影響を見てみましょう。
たとえば、今まで15万円で買えていた仕事用のノートPCがあったとします。これが30%値上げされると、一気に19万5千円になる計算です。
約5万円もアップ――Switchがもう一台買えてお釣りが来るレベルです。
企業が社員用に100台まとめて買うとしたら、予算が数百万単位で吹っ飛ぶことになります。経理担当者が泡吹いて倒れそうな話です。
原因はDRAM価格の深刻な高騰
原因は、前回の記事でも触れたDRAM(メモリ)価格の深刻な高騰です。
メモリ価格の上昇が止まらない上に、AI対応のための高性能パーツも必要になっています。Dellほどの巨大企業が「もう無理、3割上げるわ」と白旗を上げたということは、事態は想像以上に深刻なのです。
「法人向けだから関係ない」は甘い
「でも、それって法人向けの話でしょ?個人用のPCは関係ないんじゃない?」
それが一番の勘違いです。
PC業界では、法人モデルの価格改定は「炭鉱のカナリア」です。大量生産でコストを抑えやすい法人モデルですら維持できないなら、個人向けモデルが値上げされるのは時間の問題、いや、秒読み段階と言えます。
「30%」という数字は、これまでの常識的な「5%〜10%の値上げ」とは次元が違います。PCパーツ全体の価格構造が、完全にインフレ・モードに突入したことを意味しています。
Dellが動けば、HPやLenovoといった他の大手メーカーも「右に倣え」で追随するのは確実です。
具体的な値上げ額が恐ろしい
今回流出したDellの内部資料に書かれていた「具体的な値上げ額」を見れば、「30%」という数字がどれほど生々しい痛みをもたらすか、嫌でも理解できるはずです。
今回の値上げは一律ではありません。搭載するメモリやSSDの容量が大きければ大きいほど、雪だるま式に値上げ幅が膨れ上がる仕組みになっています。
つまり、ハイスペックなPCを買おうとする人ほど、重い罰を受けるということです。
32GBメモリ:約2〜3.5万円アップ
クリエイターやゲーマーなら今や標準的な「32GBメモリ」を搭載した場合、値上げ幅は130ドルから230ドル――日本円にして約2万円から3万5千円の値上げになります。
メモリを32GBにするだけで、追加で3万円も取られるのです。そのお金があったら、ちょっと良いモニターが買えてしまいます。
これまでは「メモリ増設なんて数千円」の感覚でしたが、これからは「メモリ増設は高級オプション」になるわけです。
128GBメモリ:約8〜12万円アップ
ワークステーションなどの最上位機種で「128GBメモリ」を搭載した場合、値上げ幅は520ドルから765ドル――日本円にして、なんと約8万円から12万円の値上げです。
PCの「本体価格」ではなく、「値上げ額」だけで12万円。もう一台、そこそこ良いゲーミングPCが買える値段です。
最新メモリを大量に積むということは、それだけ高騰したコストをモロに被るということ。「最強のPCを作ろう」と思った瞬間、メモリ代だけで財布が爆発します。
SSDも連鎖値上げ
地獄はメモリだけではありません。「SSD(ストレージ)」も道連れです。
資料によると、1TBのSSDを搭載する場合、55ドルから135ドル――日本円で約8千4百円から2万円の値上げが実施されるそうです。
1TBなんて、今のPCなら最低ラインです。それを選ぶだけで2万円も上乗せされるのです。
「OSとゲームを入れたら1TBなんてすぐ埋まる」という現代において、この値上げは全ユーザーに対するボディブローです。
今回のDellの値上げ計画は、「ハイスペックへの課税」と言ってもいいでしょう。メモリとSSD、両方を盛ったPCを買おうとしたら、合計で10万円以上の値上がりは覚悟しなければなりません。
なぜかモニターまで値上げ
地獄の釜の蓋はまだ開ききっていません。今回の値上げラッシュ、なんとモニター(ディスプレイ)にまで飛び火することが判明しました。
「ちょっと待って!PC本体はメモリが高いから仕方ないとしても、モニターなんてただの画面じゃない!あそこにDRAMなんてそんなに使ってないでしょ!?」
その通りです。技術的にはモニターは今回の騒動の影響を受けにくいはずです。
しかし、企業というのは恐ろしい。DellはこのDRAM高騰をきっかけに、製品ラインアップ全体の「コスト構造の見直し」を行っているようです。
いわゆる「とばっちり」です。
具体例:Dell Pro 55 Plus 4Kが2万3千円アップ
具体的には、現在約1350ドルで売られている「Dell Pro 55 Plus 4K」という大型モニター。これが今回、ドサクサに紛れて150ドル――日本円で約2万3千円の値上げが予定されています。
その「値上げ分」だけで、安い事務用モニターがもう一台買えてしまいます。
他の一般的なモニターについても詳細は不明ですが、主力の27インチ4Kモニターなどで1万円近い値上げが実施される可能性が高いでしょう。
PC本体で数万円むしり取られて、モニターでも1万円追加徴収――PCを一式買い揃えようとしたら、破産確定です。
AI向けPCはさらに高額に
トドメの一撃です。今、世界中で奪い合いになっているAI向けノートPCも、容赦なく値上げ対象になっています。
最新の「NVIDIA Blackwell GPU」を搭載したワークステーションの価格改定がエグいのです。
GPUには「VRAM(ビデオメモリ)」というメモリが大量に使われているため、メモリ高騰の影響をモロに受けます。
エントリー向けでも1万円アップ
エントリー向けの「RTX PRO 500(VRAM 6GB)」搭載機種でも、66ドル、約1万円の値上げです。
一番下のランクでも1万円アップ――厳しい時代です。
最上位は8万円アップ
本気でAI開発をするための「VRAM 24GB」を搭載した最上位モデルの値上げ幅は、なんと530ドル――日本円で約8万円です。
さっきのメインメモリの12万円と合わせたら、単純計算で本体の値上げ分だけで20万円コースです。
値上げ額だけで20万円。AIという最先端技術には、それだけの対価が必要だということです。
2026年、PC市場は「インフレの嵐」に飲み込まれます。モニターも、GPUも、SSDも、全てが同時に値上がりするのです。
流出した内部メールが証明する「本気度」
「どうせ脅しでしょ?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、Dellの本気度を示す決定的な証拠があります。Business Insiderが入手した、11月25日にDellが営業スタッフ宛てに送った「内部メール」の存在です。
「危機的な次のステップ」
メールのタイトルは「Critical next steps(危機的な次のステップ)」。
そこには、営業チームに向けた緊急指令が記されていました。
まず、Dellは現状をこう警告しています。
「世界のメモリとストレージの供給は、急速に逼迫(ひっぱく)している」
DRAMやNANDチップの契約価格は、この四半期ですでに大幅に上昇しています。さらにサプライヤー(部品メーカー)からは、「AI需要のせいで、これ以上の供給は制限するぞ」というシグナルが出ているといいます。
AIという怪物が、部品を全部食い尽くしているのです。
「断固として行動せよ」
だからDellは営業マンたちにこうハッパをかけました。
「Move decisively(断固として行動せよ)」
具体的には:
- 来週中に大口の顧客(トップアカウント)に連絡を取れ
- 商談をまとめろ
- 数四半期にわたる大型契約を計画しろ
「嵐が来る前に、今のうちに契約書にハンコを押させろ!」という号令がかかったわけです。
恐ろしい「罠」のような警告
ここで一番恐ろしい警告文が書かれていました。
「今日の注文であっても、将来の納品(Future delivery)であれば、現在の価格は固定されない(DOES NOT lock in)」
どういうことか?
「注文は今日だけど、納品は来年の春で」みたいな契約だと、今の安い価格は適用されず、納品時の高い価格が請求される可能性があるということです。
「お寿司注文した時は100円だったのに、食べる時に時価で1万円請求される」ようなものです。
それだけ、価格変動のリスクがDellにとってもコントロール不能なレベルに達している証拠です。
「今の価格で買いたければ、今すぐ物を押さえろ。先延ばしにするな」という最後通告と言えます。
現場の悲鳴:「制御不能」
現場の営業担当者からの生々しい悲鳴もリークされています。
ある営業社員の証言によると、最初は「値上がりする前に、今の在庫を急いで買ってください!」と顧客を助けるために奔走したそうです。
しかし、今の状況はそんな個人の努力でどうにかなるレベルを超えてしまいました。
彼らは現状をこう表現しています。
「もはや我々の制御不能(Out of our control)である」
プロの営業マンが「もう無理です、どうにもなりません」とサジを投げたということです。在庫という防波堤が決壊して、値上げの津波が押し寄せている状態です。
副作用:割引の消滅
Dell側もただ手をこまねいているわけではありません。なんとか値上げ幅を抑えようと、自社の利益(マージン)を削ってコストを吸収しようとはしています。
しかし、そのしわ寄せがどこに来るか?
営業スタッフが顧客に提示できる「割引(ディスカウント)」の制限です。
今までなら「社長、そこをなんとか!」「わかりました、上司に掛け合ってあと5%引きます!」みたいな交渉ができました。それが一切できなくなります。
「定価が上がる」上に、「値引きも禁止」――ダブルパンチです。
お得意様割引も、キャンペーン割引も消滅します。
経営トップも「前例がない」
この危機感は現場だけではありません。経営トップも同じ認識です。
11月25日の決算説明会で、DellのCOO(最高執行責任者)であるジェフ・クラーク氏が発した言葉が衝撃的でした。
彼は今回の市場価格の上昇を「Unprecedented(前例がない)」と表現しました。
何十年もPCを作ってきたトップが「こんなの初めて」と言っているのです。
さらにこう続けました。
- 「これほどのスピードでコストが変動するのは見たことがない」
- 「需要が供給を遥かに上回っている」
今まで経験したことのない速度で部品代が跳ね上がり、作っても作ってもAIブームに吸い込まれていく。世界のDellですら、この荒波の中では木の葉のように翻弄されているのです。
「前例がない」事態には、「前例がない」価格で対抗するしかない――それが、今回の最大30%値上げの正体です。
なぜここまでチップ不足なのか
そもそもなぜこんなに「チップ不足」になっているのでしょうか?
犯人はもっと身近で、そして巨大な存在です。ここでもやっぱりAIなのです。
AI企業による買い占め
今、GoogleやMicrosoft、Metaといった巨大テック企業たちが、AIモデルやクラウドサービスを動かすために、狂ったような量でDRAM(メモリ)とNAND(ストレージ)を買い占めています。
その規模が兆円単位。彼らが根こそぎ持っていくせいで、私たち一般人が使うスマホやPC向けのチップが、市場から蒸発してしまっているのです。
大食い怪獣がビュッフェの料理を全部平らげた後で、私たちが「食べるものがない!」と騒いでいる状態です。
寡占市場の恐怖
さらに悪いことに、DRAM市場というのは、実質的にたった3社によって支配されています。
- Samsung
- SK Hynix
- Micron
この3大メーカーが、世界的なサプライチェーンの緊張と爆発的な需要を見て、「よし、値上げだ」と足並みを揃えたわけです。逃げ場がありません。
衝撃の数値
市場調査会社のCounterpointが出したデータが、その残酷さを物語っています。
2025年のDRAM価格は、今年だけですでに50%も上昇しています。
1万円だったものが1万5千円に。しかし、地獄はこれからです。
2025年の第4四半期(年末)にかけて、そこからさらに30%の上昇が見込まれています。
上がった価格からさらに3割増し――複利の計算みたいに雪だるま式に増えていきます。
専門家も「物理的に追いつけない」
Technalysis Researchのボブ・オドネル氏は、「サプライチェーン全体が、今の要求量に物理的に追いつけない」と語っています。
工場をフル稼働させても、AIの食欲には勝てないのです。
オドネル氏はこう断言しています。
「この値上げは、すべてのPCベンダーの、すべてのタイプのPCに顕著な影響を与えるだろう」
Dellだけじゃなく、HPも、Lenovoも、自作PCも、全部ダメということです。
さらに絶望的な予言として、この供給不足は一過性のものではなく、2026年を通して続くと予想されています。
来年は一年中、高いPCを指をくわえて眺めるだけの年になるかもしれません。
結論:悪いことは言わない、年内に買え
正直なところ、ある程度の値上げは覚悟していました。DDR5メモリやSSDが高騰している以上、値上げは避けられない未来だったからです。
しかし、現実は想像を遥かに超えていました。
予想よりも「時期が早すぎた」し、何より「値上げ幅がエグすぎた」のです。
当初、業界の噂ではDellの値上げ幅は「10%から20%くらいだろう」と言われていました。ところが蓋を開けてみれば、結果は30%に迫る超・大幅値上げです。
これは何を意味するか?DRAM価格の高騰が、調査会社の予測すら追い越して、異常なスピードで進行しているという証明です。
そして忘れてはいけません。このDellの動きは、間違いなく消費者向け製品にも波及します。「法人向けの話だから関係ない」なんて逃げ道は、もう塞がれています。
今が最後のチャンス
だからこそ、Windows 10のサポート終了に伴って、Windows 11への乗り換えや、新しいPCの購入を検討している人たちに告げます。
「悪いことは言わない。年内に買え」
もしこの年内のチャンスを逃したら、次はいつ買い時が来ると思いますか?
見通しでは、2027年の半ば以降まで待つことになるかもしれません。再来年の夏まで――そんなに長いのです。
少なくとも今後1年間以上は、「値段は高いのにスペックは低い」という、PC購入にとって最悪の氷河期が続く見込みです。
だからこそ、今迷っているなら決断する時です。
「あの時買っておけばよかった」と2年間後悔し続けるか、今動いて快適なPCライフを手に入れるか。
答えは決まっているはずです。
「待てば安くなる」という家電の常識は、AI時代には通用しません。今ここにあるPCが、もしかしたら今後数年で一番安いPCなのかもしれません。
PCの買い替えを検討しているなら、値札が書き換えられる前の「今」が、本当に最後のチャンスです。


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