価格高騰が深刻化しているDDR5メモリの裏側で、不穏な動きが確認されている。
セキュリティ企業DataDomeは、DDR5メモリ製品ページを6.5秒間隔で繰り返し監視する大規模ボットを検出・ブロックしたと報告した。ブロックしたリクエストの総数は1,000万件以上。購入ではなく「偵察」を目的とした、組織的な情報収集活動だ。
「買う」前の偵察——何を集めていたのか
このボットが行っていたのは、価格と在庫情報の収集だ。1ページあたり550回以上アクセスし、1時間で50,000件を超えるリクエストを送信していた。これは一般ユーザーの約6倍の頻度であり、7件に1件しか本物の購入者からのアクセスではなかったという。
さらに注目すべきは、監視対象の広さだ。消費者向けのDDR5キットだけでなく、DIMMソケット、CAMM2コネクタ、産業向けメモリモジュールまで、サプライチェーン全体の価格情報を横断的に収集していた。単に「今どこが安いか」を探しているのではなく、相場の全体像を把握しようとしていた意図が透けて見える。
巧妙な擬装、しかし「ボットの癖」は隠せなかった
このボットは検出を避けるため、いくつかの擬装工作を行っていた。昼夜のアクセスパターンを人間らしく見せるよう調整し、キャッシュを無効化して常に最新の情報を取得し続けていた。
しかしDataDomeは複数の不自然な挙動からボットと断定している。
まず、行動パターンの偏りだ。RAM製品ページだけを集中的に狙い、検索・カート・ログインといった他の機能には一切触れない。人間のユーザーがショッピングサイトを訪れれば、必ず複数の操作が混在する。
次に、休止がない。週末や深夜でもアクセス頻度がまったく落ちない。人間なら当然生まれるはずのばらつきが存在しない。
最も決定的だったのが障害時の挙動だ。技術的な問題が発生すると数分で完全に停止し、復旧後は即座に100%のペースに戻る。段階的に回復する人間の操作とは根本的に異なるパターンだ。
「偵察」の次に来るもの
価格と在庫の動向データが揃えば、次のステップは「買い時」を精密に狙った大量購入だ。
この構造は、過去にGPU市場で見られた手口と同じだ。RTX 5090の発売直後には同様の自動購入ボットによりカードが瞬時に売り切れ、転売市場に流れた事例が記憶に新しい。DDR5においても同様の動きが予想されており、すでに一部のDDR5キットがeBayで定価の7倍以上で転売されているケースが確認されている。
現状、データセンター向け需要がメモリ供給全体の約70%を占めると予測されており、一般消費者が購入できる在庫は慢性的に圧迫されている。その逼迫した状況を先読みして動くボットの存在は、価格のさらなる押し上げ要因として機能しかねない。
これはメモリ高騰を「加速させる」要因だ
重要なのは、このボットが価格高騰の「原因」ではなく「結果」として動いている点だ。DRAMの供給不足とAI需要による価格急騰という構造的な問題があったうえで、そこに利益機会を見出した組織がボットを展開している。
つまり問題の根は深い。仮にボットを完全にブロックしても、供給不足と需要過多という根本は変わらない。ただし、ボットによる在庫独占と転売が加わることで、一般消費者が正規価格で購入できる機会はさらに削られる。
RTX 5090やPS5の転売騒動を経験したゲーマーにとって、この構図は見覚えがあるはずだ。次のターゲットがDDR5になっている、ということだ。
※本記事の数値はDataDome社の発表に基づく。同社はボット対策サービスを提供するセキュリティ企業である点は留意されたい。
参考ソース
・https://datadome.co/threat-research/scarcity-ddr5-ram-fueled-by-ai-demand-scalping-surge

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