Samsung・SK hynixがQ2のDRAM価格を大幅引き上げへ――年間130%上昇予測、正常化は2027〜2028年?

メモリ市場が、静かに崩壊しつつある。

正確に言えば、崩壊しているのは「誰でもDRAMを買える」という前提だ。Samsung・SK hynixのQ2向け契約価格の提示内容が徐々に明らかになり、業界関係者からは「あまりにも非現実的」という声が上がっている。


目次

130%という数字の意味

ソウル経済新聞は2026年2月27日、Samsung電子とSK hynixが主要顧客に対し、Q2のDRAM供給価格を大幅に引き上げる方針を通知し、現在交渉段階に入っていると報じた。

価格上昇の規模感は、グローバル市場調査会社Gartnerの予測が一つの目安になる。2026年末までにDRAMおよびSSDなどメモリ価格が130%上昇するという見通しが、今月新たに公表された。

DRAMの実勢価格を見ると、この数字がいかにリアルか分かる。DRAM Exchangeのデータによれば、DDR4 8Gbの製品価格は2025年3月時点で1.3ドルだったものが、同年末には9.3ドルに急騰。2026年2月には13ドルを超え、さらに40%上昇している。2025年初頭と比較すれば、すでに10倍近い水準だ。

Wccftechの分析では、DRAM価格単体で2025年10月比3倍以上に達しているとしており、この上昇は一時的な需給の乱れではなく、「構造的な変化」だという見方が業界内で固まりつつある。


需要と供給の、埋まらない溝

なぜここまで価格が上がるのか。答えは単純で、供給が需要に追いつかない。

Samsungの現在の生産能力は、急増するDRAM需要の「60%程度しか賄えない水準」だと業界関係者はSedailyに語っている。SK hynixも今年の生産能力の伸びは前年比約7%増にとどまる見込みだ。つまりメモリ3社(Samsung・SK hynix・Micron)合計でも、今年の供給増加はごくわずかに過ぎない。

需要側はどうか。AI産業が「単純な検索・生成」から「人間の専門領域を代替するエージェンティックAI」へと転換したことで、推論と演算を支えるDRAMの消費量が急拡大している。データセンターだけでなく、スマートフォンやエッジデバイスにもエージェンティックAIが組み込まれ始め、末端の需要もかつてとは比較にならない規模になった。

業界関係者は「企業がAIを用途別に2〜3種類同時に使う形が当たり前になり、DRAM需要はさらに膨らんでいる。すでに来年(2027年)分の物量まで完売状態で、価格上昇の基調は続く」と述べている。


「大企業」と「それ以外」の間に生まれた断絶

価格高騰の影響は、すべての顧客に平等には届かない。むしろ格差を極端に拡大している点が、今回の局面の最も深刻な側面だ。

NVIDIAやAppleのような大口購買者は、四半期または半期単位でLTA(長期契約)を結んでいる。契約時に価格の範囲をあらかじめ決め、実際の納品時の市場価格に基づいて最終価格を調整する仕組みだ。Samsungも SK hynixも、こうした大量購入者に対しては、サプライチェーン維持の観点から価格面での優遇措置を講じている。

一方、中小規模の顧客は月次で市場価格を反映した契約を結んできた。価格が急騰した2025年Q4以降は、SamsungとSK hynixが有利な「先買い(入道先買)」方式への切り替えを進め、新規契約時は価格交渉の「幅」そのものがなくなる構造になっている。

業界関係者によれば「一部の顧客は、直前の契約価格の2倍以上の引き上げを受け入れなければDRAMを確保できない状況に置かれている」という。

中小企業にとっては、値段の問題だけでなく「そもそも物量が割り当てられない」というリスクが現実になりつつある。DRAM不足で製品ラインナップを絞り込んでいるメーカーが増えているのは、その結果だ。


一般ユーザーへの影響は:消費者は「割を食う側」

この問題をPC自作やゲーミング市場の視点で見ると、見え方がさらに変わる。

BtoBの契約価格が上がれば、当然BtoCの小売価格にも波及する。32GB DDR5キットがすでに5万円を超える相場が続いている中、この構造的な供給不足が続く限り、価格が「元の水準」に戻ることは当面期待できない。

ここ数年を振り返れば、2023〜2024年にかけてDRAM価格は調整局面を経て下落し、PCのメモリ増設がリーズナブルな時期もあった。しかしAIインフラ投資の波が一気に需給を塗り替え、今や消費者向け市場は「大量購買者が残した端材を高値で買う」構図になっている。

中国CXMT製のDRAMが「救世主」になるとの期待も一時あったが、実際にはKingBankの32GB DDR5が中国国内で3,629元(約530ドル)で販売されており、欧米品と価格はほぼ変わらない。コスト構造、採用実績、規制リスク、そしてCXMT自身のHBM3シフトを考えれば、「中国製メモリが安価な代替品になる」シナリオは現実的ではない。


正常化はいつか:業界の見立ては「2027〜2028年」

では、この異常な状況はいつ終わるのか。

Wccftechの分析では、業界内の推定として正常化の目安は2027年〜2028年中頃という見方が示されている。これは市場が供給超過に転じ、価格が下落サイクルに入るタイミングの話だ。

楽観的なシナリオとしては、エージェンティックAI需要の成長が想定より鈍化した場合や、Micronの生産拡張が想定より早く効いてくるケースが考えられる。ただし、複数の業界関係者が「2027年物量まですでに完売状態」と語っていることを踏まえれば、需給バランスが反転するには相応の時間がかかると見るのが現実的だ。


まとめ:これは「高いタイミング」ではなく「構造が変わった」

価格高騰を「一時的な需給の乱れ」ととらえているうちは、対策の判断を誤る。

今起きていることは、AIが計算資源の消費モデルを根本から変えたことによる、産業構造の転換だ。DRAMは半導体の一部品ではなく、AIインフラの基幹資源になった。そしてその資源を持つプレーヤーは、今かつてないほど強い「売り手の立場」にいる。

消費者にできることは限られる。今すぐ必要でないなら、現在の相場で無理に購入する必要はない。しかし「来年になれば安くなる」という判断は、現時点では根拠が薄い。2026年を通じて価格が高止まり、あるいはさらに上昇する可能性は十分ある。

メモリ市場を注視するなら、見るべき指標は一つだ。Samsungと SK hynixがHBMから通常DRAMへの生産配分を戻す動きを見せるかどうか。それが起きた時が、潮目の始まりになる。


参考文献

https://wccftech.com/the-new-memory-prices-for-q2-are-so-absurd-that-buyers-might-find-it-better-to-give-up

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この記事を書いた人

『らぼぷら』の編集兼運営者をしており、動画投稿含めすべてのコンテンツを執筆・編集しています。
中学時代から自作PCに熱中し、CPUやGPUの比較検証、冷却・静音チューニングまで幅広く研究してきました。
得意なことを活かしたい!という思いから、長年の趣味であるPC・ガジェット情報を発信する当サイトを開設!

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