メモリ価格、ヘリウム不足でさらに高騰か? 中東情勢が半導体サプライチェーンを直撃

AI需要でただでさえ高騰しているDRAMやNANDの価格だが、ここへきてさらに厄介な問題が浮上している。チップ製造に欠かせない「ヘリウム」の供給が、中東の軍事衝突によって深刻な打撃を受けているのだ。

目次

ヘリウムって、なんで半導体に必要なの?

そもそもヘリウムといえば風船やバルーンのイメージが強いが、実は現代の半導体製造において非常に重要な役割を担っている。

ウェーハの製造工程では、シリコンウェーハをエッチングする際に不要な化学反応が起きないよう、ヘリウムを「ブランケットガス」「パージガス」として充填する。化学的に不活性で反応しにくい性質がここで活きる。さらに熱伝導率が極めて高く、ウェーハや装置を急速冷却するクーラントとしても使われており、EUV露光装置の一部インフラにも欠かせない存在だ。

半導体業界はすでに2025年10月時点で、ヘリウムの業界別消費量トップをMRI機器から奪取しており、AI需要の拡大とともにその消費量は急伸している。


問題の核心:世界のヘリウムの3分の1がカタールから

ヘリウムの重要な特徴として、液化天然ガス(LNG)生産の副産物である点が挙げられる。つまりLNGを大量に生産する国が、ヘリウムの大産地にもなる。

韓国国際貿易協会のデータによると、韓国は2025年のヘリウム輸入量のうち64.7%をカタール1国に依存していた。そしてカタールは、半導体グレードのヘリウムを生産できる世界でも2ヶ所しかない施設のひとつを擁している。

ここで地図を見てほしい。カタールはペルシャ湾をはさんでイランの真向かいに位置する。


何が起きたのか

2026年2月28日、米国とイスラエルがイランへの空爆を開始。3月2日、イランのドローン・ミサイル攻撃を受け、カタールの国営エネルギー企業QatarEnergyはラス・ラファン工業都市での生産を停止した。ここはカタールのLNG・ヘリウム生産の中核施設だ。

さらに問題をこじらせているのがホルムズ海峡の封鎖だ。ホルムズ海峡が長期閉鎖されると、世界のヘリウム供給量の25%超が市場から消えると、ヘリウムコンサルタント会社Kornbluth Helium ConsultingのPhil Kornbluth氏はCNBCに語っている。


回復まで最低でも数ヶ月

厄介なのは、生産を止めた施設がすぐに再稼働できないことだ。Kornbluth氏は「ヘリウムの生産停止がどれだけ続いても、物流を正常化して完全に元に戻るまで、さらに少なくとも2ヶ月が必要になる」と述べている。

彼のシナリオでは最低でも2〜3ヶ月の供給ショック、正常化には4〜6ヶ月かかるとみている。すでに一部の産業ガス大手はヘリウムの割増料金を顧客に請求し始めており、フォースマジュール(不可抗力条項)の発動や供給割当てが行われれば、本格的な世界的不足に向かうサインとなる。


韓国半導体メーカーへの影響は?

Samsung・SK hynixをはじめとする韓国の半導体メーカーにとって影響は深刻だ。

業界関係者によれば、各社は現時点でサプライチェーンの多様化を進めているため、短期的な影響は限定的としている。Samsungはヘリウムリサイクルシステムを一部ラインに導入済みで、国内チップメーカーのヘリウム在庫は約6ヶ月分あるとされる。

SK Hynixはヘリウムの在庫確保に加え、新たな調達ルートを確保し、短期的なショックをある程度緩和できる状態にあるという。

ただし、これは「今のところ」の話だ。紛争が長期化すれば代替調達コストは膨らみ、製造コスト全体を押し上げる。


ヘリウムだけじゃない:臭素(ブロミン)問題も

実はヘリウムと並んで懸念されているのが「臭素」だ。DRAMとNANDフラッシュ製造のポリシリコンエッチング工程で広く使われる高純度臭化水素(HBr)の原料となる臭素について、韓国はその輸入の97.5%をイスラエル一国に頼っており、中東依存度の高い半導体原料14品目のひとつとなっている。

複数のリスクが重なる構図だ。


結局、メモリ価格はどうなる?

AI需要の急拡大を背景に、Alphabet・Amazon・Microsoft・Metaが2026年だけで総額約6,500億ドルのAIインフラ投資を予定しており、世界のメモリチップ供給はこれらの大口注文に吸い上げられている状態が続いている。

こうした中でヘリウム不足が製造コストを押し上げれば、メーカーは利益率の低いコンシューマ向けチップの生産を後回しにして、大口AI向け優先に動く可能性がある。供給側が絞られるうえに需要は旺盛という最悪の組み合わせだ。

なお、Seagateなど一部企業は短期的には供給チェーンへの影響は限定的との見方を示している。ただ、これも「今は」という話に過ぎない。


まとめ

項目内容
原因イラン戦争によるホルムズ海峡封鎖・カタール施設停止
影響物資ヘリウム(+臭素)
韓国の依存度ヘリウムの64.7%をカタールから輸入
現在の在庫約6ヶ月分
正常化の目安最低4〜6ヶ月
メモリへの影響長期化すれば製造コスト増→価格上昇圧力

RAMポカリプスで価格が高騰している最中に、こんなリスクまで出てきた。短期的には在庫でなんとか乗り切れるかもしれないが、紛争が長引けば半年後に笑えない価格になっている可能性は十分ある。PC用メモリの増設を検討しているなら、今のうちに動いておいた方が賢明かもしれない。


参考:CNBC / Sherwood News / C&EN / Korea Times

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この記事を書いた人

『らぼぷら』の編集兼運営者をしており、動画投稿含めすべてのコンテンツを執筆・編集しています。
中学時代から自作PCに熱中し、CPUやGPUの比較検証、冷却・静音チューニングまで幅広く研究してきました。
得意なことを活かしたい!という思いから、長年の趣味であるPC・ガジェット情報を発信する当サイトを開設!

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