AMDのRyzen 9 9950X3D2 Dual Editionのレビューが複数公開された。Tom’s Hardwareのベンチマーク結果によると、Ryzen 9 9950X3Dと比較してゲーミング性能の向上はほとんど確認されず、17タイトル平均でわずか0.8%の差にとどまった。一方、レンダリングやデータサイエンス系の特定ワークロードでは最大25%の性能向上が見られるものの、$899という価格を正当化できるユーザーは限られそうだ。
そもそも何が新しいのか
AMDはこれまで、12コア・16コアのX3D CPUにおいて、2枚あるCCDのうち片方にしか3D V-Cacheを積んでこなかった。つまり16コアのうち8コアは、大容量L3へのアクセスに余分なレイテンシが生じていた。
Ryzen 9 9950X3D2はその構造を変え、両方のCCDにSRAMを積んだ世界初のX3D CPUとなった。合計L3キャッシュは192MB(通常の9950X3Dは128MB)。全16コアがほぼ均等にキャッシュへアクセスできる設計だ。
「2倍のキャッシュ容量」ではなく、「全コアへの均等なキャッシュアクセス」が最大のポイント。容量よりもレイテンシ削減が主眼である。
また、以前はCCDの上部にキャッシュを積んでいたのに対し、今回はCCD下部への配置に変更。これにより熱設計の自由度が上がり、フルオーバークロックにも対応している。
主要スペック比較
| モデル | L2+L3 | コア/スレッド | 最大クロック | TDP / 最大電力 | MSRP |
|---|---|---|---|---|---|
| Ryzen 9 9950X3D2NEW | 208 MB | 16C / 32T | 5.6 GHz | 200W / 270W | $899 |
| Ryzen 9 9950X3D | 144 MB | 16C / 32T | 5.7 GHz | 170W / 230W | $699(実売$676) |
| Ryzen 9 9950X | 80 MB | 16C / 32T | 5.7 GHz | 170W / 230W | $649(実売$520) |
| Ryzen 9 9900X3D | 140 MB | 12C / 24T | 5.5 GHz | 120W / 230W | $599(実売$530) |
| Ryzen 7 9850X3D | 104 MB | 8C / 16T | 5.6 GHz | 120W / 162W | $499 |
| Ryzen 7 9800X3D | 104 MB | 8C / 16T | 5.2 GHz | 120W / 162W | $479(実売$464) |
ゲーム性能:他のX3Dとほぼ変わらない
AMDは「ゲーム性能は9950X3Dと同等」と主張しているが、実際のベンチ結果はそれを裏付けている。17タイトルの平均フレームレートでは、9950X3Dとの差はわずか+0.8%、1%低値も+1.3%程度。誤差範囲と言って差し支えない。
Intel最速ゲーミングCPUのCore i9-14900KやCore Ultra 7 270K Plusに対しては23〜24%の優位性があるが、これはX3D世代全体の強みであり、9950X3D2固有の話ではない。
ゲーム目的での購入は費用対効果が悪い。同等かそれ以上のゲーム性能を、Ryzen 7 9800X3D($464)か9850X3D($499)なら半額以下で実現できる。
CPU性能(マルチスレッド・シングルスレッド)
マルチスレッド性能
マルチスレッド性能では、AMDが上位3席を独占する結果となった。1位が9950X3D2、2位・3位は9950X3Dと9950Xと、16コアの9950Xシリーズが揃って上位に並ぶ形だ。9950X3D2は9950X3Dより約4%、ベースモデルの9950Xより7.4%速い。
もっとも、Intelもすぐ後ろに迫っている。3倍もの価格差があるにもかかわらず、9950X3D2はCore Ultra 7 270K Plusに対してわずか9%しかリードできていない。
レンダリングやエンコードといった処理では小幅な性能向上にとどまり、単体では$899の価値を正当化するほどのインパクトはない。後述する特定のワークロードでは2ケタ台の改善が見られるが、それはあくまで限られたユーザー向けの話だ。
シングルスレッド性能
シングルスレッドでは、わずかな性能低下が見られる。9950X3D2のピーククロックが9950X3Dより若干低い(5.6GHz対5.7GHz)ことが原因だ。シングルスレッドの総合ランキングでは依然としてIntelが上位3席を占めており、AMDのZen 5上位モデルは中位グループに位置している。その中でRyzen 7 9850X3Dは高いブーストクロックを活かして健闘している。
数字で見ると、9950X3D2が9950X3Dに対してシングルスレッドで落とすのは約0.77%。測定のサイクル間ばらつきと区別がつかないレベルの差であり、実質的に誤差範囲内と言っていい。
全体的に見て、この3モデル間のマージンは多くのテストで5%未満に収まる。例外はSPEC Workstationなど特定のワークロードで、ここでは2ケタの差が確認できる。結果の信頼性を確認するため、9950X3D2と9950X3Dについては1チップあたり約10時間かかるテストをもう一度まわして再検証したが、数値はほぼ同じだったそうだ。
アプリ・専門ワークロード:恩恵はあるが限定的
9950X3D2が真価を発揮するのは、大量のデータを扱うヘビーなマルチスレッドワークロードだ。レンダリング、エンコード、特にデータサイエンス系の処理では、最大25%のパフォーマンス向上が確認されている。
理由はシンプルで、CCD間のデータ転送が不要になることでレイテンシが減少するからだ。レイテンシテストでは64MBまでのデータ領域において安定した低レイテンシを維持しており、これは9950X3Dの約2倍の範囲にあたる。ただし一般的なアプリ性能(マルチタスク・オフィス・クリエイティブ系)での差は小さく、$200以上の価格差を埋めるほどではない。
電力・発熱:テスト中で最も高い数値
デュアルキャッシュを積んだ代償として、消費電力と発熱も増大している。TDPは200W、ピーク時は270WとZen 5世代コンシューマー向けCPUとして最高値を記録。ゲーム時の平均消費電力は135.4W(テスト内最高)、平均温度も67℃でトップとなった。効率性はCore Ultra 7 270K+と同程度であり、X3D世代の中では相対的に効率が悪い。
価格と結論
AMDはこのCPUがマスマーケット向けではないことを承知の上でリリースしている。ゲーム向けではなく、特定の専門的なワークロード――データサイエンス・科学計算・機械学習の前処理など、大量のデータをオンチップで完結させたい用途――向けの製品だ。そのユーザーが100人に1人いるかどうか。
一般のゲーマーやクリエイターにはRyzen 7 9800X3D / 9850X3DかRyzen 9 9950X3Dを強く推奨する。9950X3D2は特殊業務用マシンのビルダー、あるいは「最強CPUコレクター」向けの製品だ。

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