情報元: Videocardz / リーカー: jaykihn / 更新: 2026年4月
概要
次世代Intel Nova Lake-Sデスクトップ向けCPUに搭載される「bLLC(Big Last Level Cache)」の詳細スペックが、リーカーのjaykihn氏によって明らかになった。今回の情報はダイ構成ごとのキャッシュ容量に踏み込んだもので、これまでの断片的なリーク情報をかなり具体的に補完する内容となっている。
最大構成では288MBという驚異的なキャッシュ容量を実現。来週発売予定のAMD Ryzen 9 9950X3D2(208MB)を最大38%上回る数値であり、デスクトップCPUのキャッシュ競争が新たな局面に入ったことを示している。
bLLCとは? AMDのX3Dとは何が違うのか
IntelがAMDのX3D(3D V-Cache)に対抗するために持ち出した技術が「bLLC(Big Last Level Cache)」だ。名前の通り、従来よりも大きなラストレベルキャッシュを搭載したダイバリアントを指す。
重要なのは、AMDとIntelではキャッシュを増やすアプローチが根本的に異なるという点だ。AMDのX3DはSRAMのダイをCPUダイの上に3D積層(スタッキング)することでキャッシュ容量を増やす。この手法はダイサイズをほぼ変えずにキャッシュを追加できる一方、製造工程が複雑になりコストや歩留まりへの影響がある。
対してIntelのbLLCは、コンピュートタイル自体のシリコン面積を拡大することでキャッシュを組み込む、よりオーソドックスな方法を採用している。標準コンピュートタイルのダイサイズが98mm²であるのに対し、bLLCタイルは154mm²と約57%大きい。ダイが大きくなる分、1枚のウェハから取れるチップ数が減るため製造コストは増すが、積層プロセスの複雑さは回避できる。
どちらのアプローチが優れているかは一概には言えない。キャッシュのレイテンシや帯域幅、実際のゲーム・クリエイティブワークにおける性能は、実機のベンチマーク結果が出るまで判断できない部分が大きい。
ダイ構成一覧
Nova Lake-Sのデスクトップラインナップは、大きく分けてシングルコンピュートタイルとデュアルコンピュートタイル(DS)の2系統で構成される。デュアル構成は「DS」と呼ばれ、エンスージャスト向けのハイエンドモデルをカバーする。
全モデル共通で2基のXe3コアを持つiGPUを搭載しており、特定SKUではより高性能なiGPUを搭載する計画も存在するとされている。LPE(Low-Power Efficiency)コアはコンピュートタイル上には搭載されないため、デュアルタイル構成でもLPEコア数は4基のまま変わらない点が特徴だ。
| ダイ | タイル | コア構成 | LPE | キャッシュ種別 | iGPU |
|---|---|---|---|---|---|
| 8C | シングル | 4P+0E | 4 | 標準 | 2 Xe3 |
| 16C | シングル | 4P+8E | 4 | 標準 | 2 Xe3 |
| 28C | シングル | 8P+16E | 4 | 標準 | 2 Xe3 |
| 28C | シングル | 8P+16E | 4 | bLLC | 2 Xe3 |
| 52C | デュアル | 2×(8P+16E) | 4 | bLLC | 2 Xe3 |
SKU一覧とキャッシュ容量
現時点で少なくとも13モデルの展開が予想されており、Core Ultra 9 / 7 / 5 / 3の各ティアに加え、デュアルタイル構成のCore Ultra Xというさらに上位のカテゴリが設けられる見込みだ。
TDP帯は35Wから175Wと幅広く、Core Ultra 3・5の一部が35W、標準ラインが125W、デュアルタイルのエンスージャストモデルが175Wとなっている。また「F」モデル(iGPUなし)も用意される予定で、iGPUを必要としないゲーマー向けのコストパフォーマンスモデルとして機能するとみられる。
jaykihn氏が今回キャッシュ容量を確定情報として公開したのはbLLC搭載の5モデルのみ。標準ダイのモデルについては引き続き未確定(TBD)とのことで、今後の続報を待ちたい。
| モデル | コア数 | コア構成 | キャッシュ種別 | 総キャッシュ | TDP/cTDP |
|---|---|---|---|---|---|
| Core Ultra X | 52C | 2×8P+16E+(4LPE) | bLLC | 288 MB | 175W |
| Core Ultra X | 44C | 2×8P+12E+(4LPE) | bLLC | 264 MB | 175W |
| Core Ultra 9 | 28C | 8P+16E+4LPE | bLLC | 144 MB | 125W |
| Core Ultra 9 | 28C | 8P+16E+4LPE | 標準 | TBD | 125W/65W |
| Core Ultra 9 | 22C | 6P+12E+4LPE | bLLC | 108 MB | 65W |
| Core Ultra 7 | 24C | 8P+12E+4LPE | bLLC | 132 MB | 125W |
| Core Ultra 7 | 24C | 8P+12E+4LPE | 標準 | TBD | 125W/65W |
| Core Ultra 7 | 16C | 4P+8E+4LPE | 標準 | TBD | 65W/35W |
| Core Ultra 5 | 22C | 6P+12E+4LPE | 標準 | TBD | 125W/65W |
| Core Ultra 5 | 12C | 4P+4E+4LPE | 標準 | TBD | 65W/35W |
| Core Ultra 5 | 8C | 4P+0E+4LPE | 標準 | TBD | 65W/35W |
| Core Ultra 3 | 6C | 2P+0E+4LPE | 標準 | TBD | 65W/35W |
AMD vs Intel キャッシュ比較
数字だけ並べると、Intelのキャッシュ容量の優位性は一目瞭然だ。来週発売のRyzen 9 9950X3D2は208MBのキャッシュを搭載し、これ自体すでに現行最大級の容量だが、Nova LakeのCore Ultra X(52C)はそれを80MB以上も上回る288MBを用意している。
ただし、AMDも手をこまねいているわけではない。次世代のX3D製品ではさらなる容量増が図られると予想されており、Nova Lakeが発売される2026年後半までに新たなX3D情報が出てくる可能性は十分ある。現時点のスペック比較はあくまでスナップショットに過ぎない。
| CPU | キャッシュ容量 | 9950X3D2比 |
|---|---|---|
| Intel Core Ultra X(52C) | 288 MB | +38% |
| Intel Core Ultra X(44C) | 264 MB | +27% |
| AMD Ryzen 9 9950X3D2 | 208 MB | 基準 |
| Intel Core Ultra 9(28C) | 144 MB | -31% |
Intel Nova Lake-S vs AMD Olympic Ridge 全体比較
両社ともにTSMC N2Pプロセスを採用する点が注目される。プロセスノードで差がつかない分、アーキテクチャ設計や電力効率、キャッシュ構成といった要素が勝負の鍵を握る形になりそうだ。
IntelはコアカウントでAMDを大きく上回り(最大52コア vs 24コア)、DDR5メモリ速度でも8000 MT/sと一歩リードしている。一方AMDはZen 6アーキテクチャの純粋な性能向上と、AM5プラットフォームの継続性というアドバンテージを持つ。ソケット変更を強いられるIntelのLGA 1954に対し、AMDが既存AM5ユーザーへの移行しやすさを武器にできるかも見どころだ。
| 項目 | Intel Nova Lake-S | AMD Olympic Ridge |
|---|---|---|
| ファミリー | Core Ultra 400 | Ryzen 10000? |
| アーキテクチャ | Coyote Cove(P) / Arctic Wolf(E/LP) | Zen 6 |
| プロセス | TSMC N2P | TSMC N2P |
| 最大コア数 | 52コア | 24コア |
| 最大スレッド | 52 | 48 |
| 最大P-Core | 16 | 24 |
| 最大E-Core | 32 | なし |
| 最大LP-Eコア | 4 | なし |
| 最大bLLCキャッシュ | 144〜288 MB | 64MB/スタック(予想) |
| DDR5(1DPC 1R) | 8000 MT/s CUDIMM | 7200 MT/s? CUDIMM |
| PCIe 5.0レーン(最大) | 36 | TBD |
| ソケット | LGA 1954 | AM5 |
| 最大TDP | 125〜175W | 125W+ |
| 最大消費電力 | 〜350W(シングル)/ 〜700W(デュアル) | TBD |
| 発売予定 | 2026年後半 | 2026年後半 |
まとめ
今回のリークで明らかになったNova Lake-SのbLLC構成は、Intelがデスクトップ市場への本格的な巻き返しを真剣に考えていることを示すものだ。Raptor Lake世代の不具合問題やArrow Lakeのデスクトップ向け評価が芳しくなかった経緯を踏まえれば、Nova LakeはIntelにとって文字通りの正念場となる。
スペック上のインパクトは申し分ない。288MBというキャッシュ容量は、現行のAMD最強X3Dモデルをスペック面では明確に超えている。しかし、キャッシュ競争の歴史が教えてくれるのは「容量が多ければ必ず速い」という単純な話ではないということだ。レイテンシ、帯域幅、実ゲームやクリエイティブワークでの挙動——これらが揃って初めて「勝者」が決まる。
両社の製品が出揃う2026年後半は、x86デスクトップ史上もっともキャッシュが多く積まれた世代の幕開けになる。PC自作ファンにとっては久々に楽しみな時代がやってきた。
※本記事の情報はリーク・未確認情報を含みます

コメント