DDR4はもう時代遅れのはずだった。2020年にDDR5が登場し、2024〜2025年にかけてEOL(End of Life)フェーズに入る予定だったメモリ規格だ。ところが今、そのDDR4が市場で引っ張りだこになっている。価格は急騰し、供給は逼迫し、メーカーはDDR4プラットフォームの延命に動いている。2026年Q3の契約価格は前四半期比50%超の上昇が報じられており、業界の当初予測を大幅に上回る事態となっている。
当初の予測を大きく上回るQ3の価格上昇
DigiTimesが台湾のサプライチェーン関係者の話として伝えたところによれば、2026年Q3のメモリ契約価格の交渉が進む中、当初は「前期の高い基準価格を受けて上昇ペースは鈍化する」と見られていた。しかし蓋を開けてみると、DRAM・Flashともに上昇幅は想定を大きく超え、特にDDR4 8Gbについては台湾系メモリメーカーからの報告として、Q2比50%超の値上げが通告されているという。台系メーカーのDDR4報価はすでにSamsungの同規格品を上回る水準に達しており、需給の逼迫がいかに深刻かを示している。
予測が外れた背景には、需要構造の想定外の変化がある。従来の分析では「PC需要の弱さがDDR4価格の上昇余地を抑制する」という見立てが多かったが、全く別の需要源が急浮上した。企業向けSSD(eSSD)だ。
AIがDDR4を「再召喚」した——eSSD需要という盲点
データセンターのAI推論ワークロードが急拡大する中、企業向けSSD(eSSD)の高容量化が猛烈な勢いで進んでいる。
eSSDとは「enterprise SSD」の略で、データセンターやサーバーで使われる業務用のSSDを指す。一般消費者がPCに載せるコンシューマー向けSSDとは設計思想が根本的に異なり、24時間365日の連続稼働に耐える耐久性、膨大な同時アクセスをさばく処理性能、データ保護機能などが求められる。当然、単価も容量もコンシューマー向けとは桁が違う。
そのeSSDの容量が、AI向けデータセンターの拡大とともに急速に大型化している。SamsungはすでにPCIe 6.0対応の16TB SSDを量産開始しており、市場全体が16TB〜30TB以上の超大容量eSSDへと向かっている。
ここで見落とされがちなのが、eSSDにはDRAMキャッシュが必須だという点だ。高いランダム読み書き性能とレイテンシ低減を実現するため、主流の構成では1TBのNAND Flashに対して1GBのDRAMを搭載する設計になっている。つまりSSDの容量が16TB・24TB・30TBへと増えるにつれ、1台あたりのDRAM搭載量も16GB・24GB・30GBと増加していく。そしてそのDRAMとして採用されているのが、コスト面と実績面から選ばれたDDR4なのだ。
DigiTimesの情報筋は、このeSSD需要の爆増が引き起こすDDR4 8Gbの供給不足は、今後2年にわたって続く可能性があると指摘している。DRAMレスのSSD(DRAMキャッシュを搭載しない廉価な構成)も選択肢として存在するが、AI推論の性能要件を満たすためにはDRAMキャッシュが不可欠な場面が多く、代替は容易ではない。
三大メーカーがDDR4から撤退した結果
この需要急増に応えられる生産体制が整っていないことが、価格高騰に直結している。Samsung・SK hynix・Micronの三大メーカーは相次いでDDR4の生産を大幅に縮小または事実上終了しており、主流はDDR5とHBM(High Bandwidth Memory)に移行した。Samsungは一部の長期契約顧客向けにのみDDR4生産を維持している程度だ。Micronはバージニア州マナサスの工場で1αプロセスのDDR4とLPDDR4を量産しているが、これは車載・国防・航空宇宙・医療といった長期サポートが必要な特殊用途向けであり、一般市場向けではない。
結果として、グローバルなDDR4需要を支えているのは実質的に台湾の南亞科(Nanya Technology)と華邦電(Winbond Electronics)の2社に絞られた状態だ。しかしこの2社の生産キャパシティは、現在の市場需要を大幅に下回っている。しかも両社はDDR4の生産を強化するためにDDR3の生産ラインを縮小しており、問題はDDR4だけにとどまっていない。
DDR3まで価格が跳ね上がるという皮肉な連鎖
DDR4の品薄と価格高騰は、さらに古い規格であるDDR3にまで波及している。
DDR3 4GbとDDR4 4Gbはネットワーク機器やテレビといった用途で競合関係にある。DDR4の価格が上がったことで一部のメーカーがDDR3へ回帰し始め、さらにはDDR2を採用する事例まで出始めている。その結果、DDR3の需要が再燃し、価格が押し上げられている。
2026年7月初旬の現物価格で見ると、旧世代のDDR3の方が最新規格のDDR5より割高という逆転現象が起きている。
| 規格 | 平均価格(2026年7月初旬) | 1Gbあたり単価 |
|---|---|---|
| DDR3 4Gb(512Mx8) | $12.75 | $3.19 |
| DDR5 16Gb(2Gx8) | $47.07 | $2.94 |
モジュール単体の価格ではDDR5の方が高いが、1Gbあたりの単位コストに換算するとDDR3の方が割高になる。供給量が極端に少ないために、世代的な製造コストの優位性が吹き飛んでいる状態だ。
DigiTimesはさらに、SLC NANDが2026年初頭からの半年間で倍増超の価格上昇を記録しており、MLC NANDも希少資源として価格が急騰していると報じている。2026年下半期も引き続き上昇圧力が続く見通しだ。
メーカーはDDR4プラットフォームに回帰している
需要側の動きも変化している。DDR5への移行を進めていたメーカーが、コスト圧力からDDR4へと逆戻りするケースが相次いでいる。
PC市場では、カラフル(Colorful)やミニスフォーラム(Minisforum)といったアジアのメーカーが、DDR5とDDR4の両対応CPUを搭載しながらあえてDDR4メモリを選択した製品を投入し始めている。DDR5は価格が高すぎて製品の価格競争力を損なうという判断だ。
企業向けでも同様の動きがある。世界最大級のデータセンターオペレーターの一つであるMetaが、最新のAMD EPYC Turinプロセッサ(本来はDDR5専用設計)にDDR4を使用していることが明らかになった。MetaはVistara(ビスタラ)と呼ばれる独自のCXL 2.0 ASICを開発し、EPYC CPUとDDR4・DDR5を橋渡しするMemServerを構築している。世界トップクラスのAIハイパースケーラーですら、DDR5の供給不足を前に旧世代メモリへの依存を余儀なくされている実態だ。
AMDとIntelもDDR4プラットフォームの延命に動いている。AMDはAM4プラットフォーム(DDR4専用)向けの新CPUを依然としてリリースしており、Ryzen 7 5800X3Dの10周年記念エディションといった製品まで展開している。IntelはRaptor Lake世代(10世代・12世代・13世代・14世代)のCPU生産を再開・継続する方針を示しており、メモリ価格高騰と供給不足を主な理由として挙げている。
2028年まで続く構造的な問題
南亞科・華邦電・旺宏(Macronix)の2026年6月の月次売上を見ると、その伸び率は契約価格の上昇率をほぼそのまま反映しているという。現時点で3社の生産キャパシティはフル稼働状態にあり、短期間での増産余地はほとんどない。
業界アナリストの大勢は、DDR5・DDR4・DDR3のいずれも、供給不足が解消される2028年まで価格上昇が続くという見方をとっている。Samsungはすでに「2027年は2026年よりもさらに厳しい状況になる」と警告しており、Silicon Motionの経営幹部もメモリ・SSDの不足が2028年まで長引くと述べている。
DDR4は時代遅れの規格になるはずだった。しかしAIが企業向けSSDの需要を爆発させ、三大メーカーが上位規格に集中し、台湾の2社だけが需給の橋渡しを担うという歪な構造が出来上がった今、DDR4の終わりはまだ見えない。
https://www.digitimes.com.tw/tech/dt/n/shwnws.asp?CnlID=1&Cat=40&id=0000761090_XE21MHR48EM96S10NK3S9

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