過去最高を更新したMicronの決算、それでも「足りない」
半導体メモリ大手のMicronが、2026年度第2四半期(Q2)の決算で売上高・粗利益率・EPS・フリーキャッシュフローの全項目で過去最高を記録した。好調の要因は言うまでもなく、AIへの需要爆発だ。
2026年3月18日に発表されたFiscal Q2 2026(2025年11月〜2026年2月)の主要指標は以下の通りだ。
Micron Fiscal Q2 2026 決算サマリー
| 指標 | Q2 2026 | Q1 2026 | Q2 2025(前年同期) | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 総売上高 | $238.6億 | $136.4億 | $80.5億 | +196% |
| DRAM売上 | $187.7億 | — | $61.2億 | +207% |
| NAND売上 | $50.0億 | — | $18.6億 | +169% |
| 粗利益 | $178億 | — | — | 過去最高 |
| 粗利益率 | 74.4% | — | — | 過去最高 |
| 営業利益 | $161.4億 | — | — | 過去最高 |
| 営業利益率 | 69.0% | — | — | — |
| GAAP純利益 | $137.9億 | — | — | 過去最高 |
| GAAP EPS(希薄化後) | $12.07 | — | — | 市場予想$9.33を大幅上回り |
| Non-GAAP EPS | $12.20 | — | — | 市場予想$9.31を上回り |
| 営業キャッシュフロー | $119億 | $84.1億 | $39.4億 | +202% |
| フリーキャッシュフロー | $69億 | — | — | 過去最高 |
セグメント別売上(Q2 2026)
| セグメント | 売上高 | 概要 |
|---|---|---|
| CMBU(クラウドメモリ) | $77.5億 | データセンター向け |
| MCBU(モバイル・クライアント) | $77.1億 | PC・スマホ向け |
| CDBU(コアデータセンター) | $56.9億 | エンタープライズ向け |
| AEBU(自動車・組み込み) | $27.1億 | 車載・IoT向け |
なお、Q3 2026のガイダンスは売上高$335億(±$7.5億)、粗利益率約81%、Non-GAAP EPSは$19.15(±$0.40)と、さらなる大幅増収が見込まれている。
しかしMicronの会長兼CEOであるSanjay Mehrotra氏は、決算発表後にCNBCのインタビューでこう釘を刺した。
AIはまだ序盤戦(First Innings)にある。GTCで目にしたように、AIの進化は目覚ましい。メモリは戦略的資産だ。AIがその能力を完全に発揮するためには、より多く、より高速なメモリが必要になる。これは推論(Inference)の転換点だ。推論が広がるにつれ、トークンの需要はスケールアップする。そのトークンを高速に処理するには、より多く、より速いメモリが不可欠だ。そして現在、メモリの供給は非常にひっ迫しており、供給を簡単に増やすことはできない——その証拠が今回の業績に表れている。
— Sanjay Mehrotra(Micron 会長・社長・CEO)
もちろん、これはメモリを製造・販売するMicron自身のCEOによる発言であり、ポジショントークである可能性は否定できない。しかし、同社の業績だけでなく、業界全体のデータや各社の動向を見ても、供給ひっ迫の傾向は一致している。
DRAMもNANDも足りない——TAMの50%超をAIが占める見通し
MicronのQ3ガイダンスでも、さらなる記録更新が予告されている。決算発表では次のようにも述べられた。
AI時代において、メモリは顧客にとって戦略的資産となっている。我々は増大する需要を支えるため、グローバルな製造拠点への投資を続けている。
— Sanjay Mehrotra
現在の軌跡によれば、DRAMおよびNANDのAI向け需要は今年中に業界TAM(Total Addressable Market=市場全体の総需要)の50%を超える見込みだ。つまりメモリ市場の売上の半分以上をAIが占めるということで、数年前まで主役だったスマートフォンやPCの存在感が相対的に急低下していることを意味する。AIサーバー向けだけでなく、従来型サーバー向けの需要も堅調だが、DRAMとNANDの供給不足がボトルネックとなって需要を消化しきれていない。
CPUに搭載されるRAMが最大4倍になる
GPUのVRAM不足が話題になりがちだが、実はもう一つの主役がある。CPUのDRAM需要だ。
エージェンティックAI(Agentic AI)の台頭により、データセンターにおけるGPUとCPUの比率はかつての8:1から4:1へと縮小し、今後1:1に近づくとも言われている。AIエージェントは「考え続ける」処理を要するため、大量のデータを常にメモリ上に展開し続ける必要がある。
韓国の業界紙によれば、CPU向けに300〜400GBのDRAMを搭載する計画が進んでいるという。現行の96〜256GBと比べ、最大4倍の増量だ。これはGPUのVRAMに相当する話であり、CPUが担うメモリ量がGPUを上回る「逆転現象」すら起きかねない。
ここで重要なのは「掛け算」の問題だ。データセンターにはCPUが大量に並んでいる。1台あたりの搭載DDR5が4倍になれば、データセンター全体のDDR5消費量もそのまま数倍に膨らむ。GPU向けにはHBMが、CPU向けにはDDR5が——それぞれ別系統のメモリが、同時並行で逼迫していく構図だ。
主要チップのメモリ搭載量をまとめると以下の通りだ。
| チップ | メーカー | 種別 | メモリ容量 |
|---|---|---|---|
| Vera Rubin | NVIDIA | GPU | 288GB(HBM4、8-Hi) |
| MI400 | AMD | GPU | 432GB(HBM4) |
| TPU 8i | TPU | 288GB(HBM) | |
| Xeon(次世代) | Intel | CPU | 〜400GB(DDR5) |
| EPYC(次世代) | AMD | CPU | 〜400GB(DDR5) |
GPU側はHBM、CPU側はDDR5と、要求するメモリの種類は異なるが、どちらも同じメモリメーカーが製造しているという点で、需要圧力は業界全体に集中している。
サムスンは「2027年はさらに悪化する」と予測
メーカー各社は増産投資を進めているが、新工場が稼働するまでには時間がかかる。Samsung自身もDRAM製造能力の積極的な拡張を計画しているが、短期的な解決策にはなりえない。
一方でSamsungは低付加価値製品から順次撤退し、利益率の高い製品へ生産ラインを集中させる戦略をとっている。すでにLPDDR4の生産を終了してLPDDR5へ移行済みであるほか、MLCベースの旧世代NANDフラッシュの生産も打ち切った。この撤退によって生まれた供給の空白には、中小メーカーが参入し利益を得ている状況だ。
同社は「2027年のDRAM市場は2026年よりも厳しくなる」と明言しており、AI需要が続く限り、供給不足は解消されそうにない。
さらに供給側のリスクとして見落とせないのが労働争議だ。Samsungでは約19日間のストライキが計画されており、交渉が決裂すれば1ヶ月超に拡大する可能性もある。このストライキによってSamsungのDRAMおよびNAND生産が最大4%程度停止し、生産が正常水準に戻るまで数週間かかると見られている。需給がひっ迫しているタイミングでの生産停止だけに、影響は数字以上に大きくなりうる。
さらに高密度なDRAMへの移行が進むにつれ、メーカーは低価格帯製品の生産ラインを縮小していく。AI向けの高付加価値品に製造リソースが集中することで、AI以外のセグメント——PC向けや民生機器向けのメモリ価格も上昇するという構図だ。
コンシューマー向けについては、Micron自身もPC・モバイルの出荷台数が低二桁台のマイナス成長になると予想している。なお、ローカルでのAIワークロードを担うPCには32GBが標準になりつつあるという。
まとめ
MicronのQ2は記録的な好業績だったが、CEOが「序盤戦」と表現する通り、AIによるメモリ需要はまだピークに達していない。HBM4・LPDDR5X・MRDIMMといった次世代規格への移行と、CPUへの大容量DRAM搭載という新たなトレンドが重なり、供給不足は今後数年にわたって業界全体の課題であり続けるだろう。
繰り返しになるが、この「不足感」を最も大きな声で訴えているのがメモリメーカーのCEO自身という点は、割り引いて読む必要がある。とはいえ、構造的な需給ひっ迫は業界共通の認識と見てよさそうだ。

コメント
コメント一覧 (1件)
Appleのメモリの価格設定が良心的に見えてくるレベルにまでメモリ価格が上昇しちゃってますね…なんなら外付けSSDもApple公式サイトの方がAmazon公式サイトより安かったという……
Mac miniで一部のモデルがもう注文不可になっていて次世代Mac miniの発売を待っている私は不安でしかありません(´・∀・`)ハヤクM5 Mac miniキテ
Appleの様な超巨大企業ですらメモリが足りなくて困るのならば、中小企業はメモリを購入する前に門前払いされていそうなレベルでメモリが足りていなくてもう価格低下の見込みは絶望的で悲しい〜!悲しすぎる〜〜〜!!!
AIは好きだけどAIバブルは崩壊してくれ〜!